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新たな電力体制―分散型へ送電網の分離を (朝日新聞社説)

キーワード:新たな電力体制―分散型へ送電網の分離を (朝日新聞社説)
朝日新聞社説2011年7月13日付けより

原発を減らしつつ、電力を確保する。それを実現させるキーワードは「電源の分散」と「発電と送電の分離」だ。

海岸近くに大規模な原発を何基も建設し、遠方の大消費地に電気を送る。今回の事故では、安定供給に向くとされた集中立地型がむしろ大規模災害時に大きなリスクとなることがあらわになった。

災害や危機に強い電力体制をつくるには、既存の電力会社だけに頼らず多様な事業者に発電を担ってもらい、電源を分散させるほうがいい。太陽光など消費地で発電する「地産地消」も広げたい。

そのためには、さまざまな発電業者が公平に接続できる送電網が不可欠だ。

日本では1995年以降、発電分野の自由化や、需要者に直接電気を売る小売り(配電)分野の市場開放を進めてきたが、発電と送電の分離は電力会社の強い反対で見送られた。

既存大手は「安定供給」を理由に自社の送電網への接続を厳しく制限し、送電網の使用料も新規参入者には高すぎる。結果的に、電力小売市場の新規事業者は今年4月時点で32社、供給に占める割合も3~4%にとどまる。

今後は原子力に代わる電力を探さなければならない。自然エネルギーや小規模なガスタービン、あるいは企業の自家発電設備や太陽光などの設備をつけた家庭から生まれる余剰電力といった多様な電源を、もっと活用する。

それには、送電部門を発電部門から切り離し、もっと公平に運用する体制を整えるべきだ。そうすれば発電業者や小売業者の競争を促すことにもなり、電気料金を抑制する効果も期待できる。

ただ、地域独占の弊害から、送電網は電力会社ごとに事実上分断されている。狭い日本の東と西で周波数が別々なのも、世界から見れば非常識だ。

電気は大量に「ためる」ことができず、常に需要と供給の量を合わせないといけない。

特に、自然エネルギーは気象条件に左右されやすい。発電場所が限定されるため、既存の電力会社管内では需要とマッチしないという問題もある。

送電を広域化すれば、需給調整の選択肢が広がり、活用しやすくなる。「分散発電・広域送電」の考え方だ。一度に全国網を構築するのは無理でも、まずは震災の直接的な影響を受けた東日本から送電網を一体運営してはどうか。

電力会社は「送電事業は薄利だから、分離すると設備投資がおろそかになり事故が起きやすくなる」と主張する。

しかし、必要なコストをきちんと情報開示し、送電網の使用料に反映できる方式にするなど、制度設計を工夫すれば対応は可能だ。

欧米ではすでに発電部門と送電部門を別の管理体系にしたり別会社化したりしている。特に欧州では広域化を促進することで、新規投資や電力融通ビジネスが盛んになる効果も上げている。

課題は少なくない。

これからは需要側が自ら発電したり、限られた範囲で電気を融通しあったりすることも想定しなければならない。ところが、これまでの送電網は大規模発電所から需要側への一方通行を前提につくられている。逆の潮流を受けても電圧や周波数に影響が出ないよう、新たな技術を使って賢い送電網(スマートグリッド)にする必要がある。

送電網の経営主体も議論になろう。国有化がいいのか、一企業の経営とするのか、利用者組合などの組織に委ねるか。電力融通や公平な接続を促す規制・監視機関も考えなければいけない。

こうした改革は、一朝一夕にはできない。新たな電力体制に向けて、すぐに効果をあげられるのは、省エネ、節電といった「需要側の改革」だ。

たとえば、家庭での電気の使い方。電力需要に占める家庭消費の割合は戦後ほぼ一貫して伸び続け、今では約3分の1を占める。今回の電力不足のように、ピーク時の需要抑制が必要な場合、家庭内での電力調整は、きわめて重要だ。

どんな時間帯にどんな機器でどれだけ電気が使われているかがわかる「スマートメーター」の導入を急ぎたい。

電力を供給する側とデータを共有すれば、時間別や電源別の料金体系を設け、電力の安い時間帯にうまく家電を動かすような工夫も可能になる。情報家電や電子機器に強い日本だからこそ、世界に先駆けた試みができるはずだ。

原発事故の処理や資源価格の上昇、自然エネルギーの固定価格買い取り制度の導入などを考えると、電力料金は当面、値上げの方向にある。

家計や経済への負荷を減らす意味でも、節電を軸に賢い電気の使い方を追求するときだ。電気を使いたいだけ使い、供給は「お任せ」にしてきた姿勢を改めなければならない。

「脱原発」「集中から分散へ」という電力改革は、依存型のエネルギー確保から、だれもがエネルギーのあり方にかかわる自立型社会への転換を意味する。エネルギー政策の主権を、消費者側に取り戻す作業と言い換えてもいい。

発電にかかるコストやリスクを吟味し、自分たちで電力を選び、必要な費用であれば負担していく。それは民主主義を深化させる道でもある。

改革の先に、新しい生活や新しい仕事、働き方の芽がある。変化をおそれるより、一歩を踏み出すときだ。
  

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Author:okiちゃん
埼玉県在住・男性
趣味は、ドライブ、花の観賞、旅行、パソコン、カメラ、軽音楽を聞くことです。健康・医療問題にも関心があります。東日本大震災と福島原発事故は人生観と生活習慣を変えました。
WebSite:okiちゃんの趣味のアルバムの閲覧Page Viewが1000万を超えました。有り難うございます。
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